おはようございます😄ブログ管理人のあーさんです。
今回は2024年8月9日公開の映画『ブルーピリオド』を鑑賞して参りましたので、その感想記事となります。
YOASOBIさんの「群青」が誕生するきっかけとなった作品であり、「マンガ大賞2020」受賞作としても知名度の高い作品の実写映画化。アニメ化もされていたそうですが、私は原作コミックもアニメも全く見ていないので今回の実写映画が初の『ブルーピリオド』体験となりました。
なぜ、観にいったのかと言いますと理由は3つあります。
- 予告を観て面白そうだと感じたから
- 特撮ファンとして特撮OB出演作には食指が伸びてしまうんや
- 邦画実写映画のクオリティをチェックするため
1番目はともかく2番目はかなり個人的な趣味嗜好ですね(笑)
ここで重要なのが3番目の邦画実写映画のクオリティをチェックするため。
私が幼少期の頃から邦画実写映画のクオリティ問題というのは話題に事欠かない。良くも悪くも熱を帯びた状態が続いております。映画レビューブログを運営する一個人としても、映画ファンとして生きるただの映画オタクとしてもこの状況に憂いを覚えています。なので、実写映画作品は可能な限り身銭を払ってでも見て、良いものには拍手喝采を送り、悪いものには罵詈雑言を浴びせてやろうじゃないかと私は腹を決めています。
という私の意思表明をしましたので本題に突入していきましょう。
『ブルーピリオド』の実写映画化は成功だったのか失敗だったのか。結論から申します。
地味ながら成功
地味ながらというなんとも微妙な枕詞を付与してしまっていますが、これを外すのも不誠実に思いましたので批判上等でありのままの私の意見を述べさせてもらいました。
そもそも原作もアニメも知らない奴に成否を判断できるのかと問われると私のお口のチャックが閉じてしまうので、反論かまされる前になぜ地味ながら成功という判を押したのか綴っていこうかと思います。
尺的な惜しさを感じてやまない!テンポが早すぎる600日間に及ぶ藝大受験戦争記
高校2年の夏休みから翌年冬の受験までの約600日間に及ぶ東京藝術大学への合格をもぎ取るための奮闘を描いた今作品。面白かったのは認めますが、尺的な都合で割とあっさり目に困難を乗り越える様を描かれていくのは引っかかるものを感じました。
主人公:矢口八虎が美大なんて将来の安定を約束してくれないいく価値の低い大学だと切り伏せ、森先輩の絵に心動かされて東京藝術大学へ受験を目指すように心境が変化していくパートは丁寧に描写されていて良かったと絶賛します。
しかし、その後の展開は駆け足気味だったと思いました。夏休み期間からの予備校、母親との対立、藝大1次試験、2次試験、中盤からイベントラッシュ=課題ラッシュなので当然と言えば当然なのだが八虎が悩んで立ち止まっている時間など上映時間に設けている場合ではない。
壁にぶつかる→少しだけ八虎が苦悩する描写を入れる→壁を乗り越えるヒントに出会う→八虎が壁を乗り越える
の繰り返しとなってしまっていたのは作品のテンポ的にも1パターンなところがあったことは否めない。面白い展開であるのは間違いないがテンポの早さが災いしてこちら側観客が八虎に感情移入しどうやって困難を乗り越えていくのか思考させてくれる間もなく物語がどんどん進んでいくのである種のダイジェスト感のようなものを抱いてしまいました。
これは惜しいと言わざるを得ない!
もう少し序盤にあった丁寧なテンポ感を中盤以降も維持してくれたらと思ってしまう。尺が足りないのはわかる。わかるのだけど観客を置いてけぼりにしないでくれとサクサクと進まんといてくれと言いたくなる自分がいました。
良くも悪くもテンポよく進んでいくので感情がのめり込む前に課題が解決してまた次の課題が現れるの繰り返しとなった本作品はテンポの良さが作品の味付けを薄味にしてしまった感があります。上映時間を10分くらい延長できていたら印象変わってきそうなので惜しかったと思います。
私が地味ながら〜以下略と冒頭で述べたのはこの薄味が原因ですね。
印象に残った名シーン
さて、イマイチだった点は述べたのでここから先は心に残った良いシーンの数々をリストアップしていきたいと思います。全体を通して見るとペース配分に難を感じる作品でしたが、部分部分を切り取ると名シーンと呼べるものが多数確認できました。思い切りネタバレとなるのでご注意ください。
- ボーイ・ミーツ・アート!森先輩の作品に魅入られる八虎
- たまたま忘れた煙草を回収するために美術室に戻った八虎が出会う運命の絵。
- 人生が変わる瞬間として美しい流れで王道だけど王道だから良い
- タイトル回収!八虎が美術の世界に足を踏み入れる瞬間
- ブルーピリオドのタイトルを回収するかの如くそれまで画材に触れてこなかった八虎が青い絵の具をパレットにのせ筆で絵の具をタッチし、水桶に青い絵の具がついた筆をスッと挿れるシーン。
- 八虎の人生に一つの幕引き=ピリオドが打たれた瞬間!
- 佐伯昌子先生の名言
- 「好きなことに人生の最大のウェイトを置く」という佐伯先生の言葉
- 予備校初日の帰り道。八虎と龍二の会話
- 予告でも印象深いシーン。天才との出会いに挫けそうになる八虎に龍二が激励を送る構図が初期の2人から想像できないもので予告以上の破壊力
- 男だけど可愛いもの・美しいものを愛する龍二の苦悩
- 変な男に絡まれて自分が変であることを押し付けられてしまった龍二
- 水族館らしき場所で心の内を吐露する龍二が水族館のロケーションと相まって切なくも美しいシーン
- 武蔵美のオープンキャンパス。森先輩の作品にヒントをもらう八虎
- 自分の人生を変えた絵を描いた先輩の新作に出会う八虎
- 天使の絵とは異なるアプローチで森先輩が絵を描く理由が表現されていることインスピレーションを受ける
- 先輩に会わずに書き置きだけ残してその場をさる八虎。言葉は交わさなくても絵からメッセージを受け取るという形でコミュニケーションが取れる美術の世界を体現したかのような名シーン!
- 恋ヶ窪晋の意外な告白
- 母親との和解
- 1次受験:自画像課題
- ハプニングで自画像を描くための鏡が割れてしまうも、そのハプニングから着想を得てデッサンに落とし込む八虎の勝負運の良さというかセンスの良さ
- これもある種の主人公補正なのかな
- 龍二と八虎と冬の海
- 八虎と高橋くんのランチシーン
- 才能の塊である高橋くんが八虎を認める一幕。
- 短いながらも不器用な2人が心を通わし正直に自分の気持ちを伝え合えているのが微笑ましい。
- エンドクレジットの粋な演出
- ここについては詳しく後述します。
こうして振り返る名シーンは多数あったと改めて実感します。
部分部分だけで評価するならかなり高得点の作品。しかし映画全体として見るとテンポ感が早いのが観客の心を置いてけぼりにするところがあったのが残念でならない。
恋ヶ窪晋の意外な告白
今作のハイライトとなったシーンを選ぶとしたら私はこのシーンを推します。誰がなんと言おうとこのシーンを推します!!
ここまで母親に東京藝術大学への受験を隠し通してきた八虎に立ちはだかる母親への願書バレ。当然の如くお母さんは猛反対で八虎の進路を堅実な路線に変更するように促してくる。それに対して八虎は自分が本当に受験合格できるだけの技量があるかという不安も相まって母親に反論することもできず夜の街を彷徨う。
そんな時に姿を現した八虎のヤンキー友達:恋ヶ窪晋(演:兵頭巧海)。私は彼が登場してきた瞬間八虎をヤンキー友達として連れ戻すために未成年NGの店に誘うのだとばかり想像してしまいました。しかし、そんな予想は裏切られて晋が八虎を連れ込んだのは👩女性客ばかりが目立つオシャレな洋菓子店らしき場所。晋と八虎以外は女性客ばかりで見た目ヤンキーの2人がかなり浮いて見えます。
私はもうキョトンですよ!どういうこと!?と思考が追いつかない状況。
そんな私の疑問に答えるかのように物語は進行し、晋の口から意外な言葉が八虎へ向かって告げられます。晋は自分がパティシエを目指していることを正直にまっすぐな瞳で言葉にする。飾らぬ言葉で高校2年の夏に突然それまで情熱を注いでこなかった美術の世界に本気で挑もうとしている八虎の姿に感化されて、自分もパティシエ職人を目指す道を進むと告白する。
このシーン。胸にグッときましたよ!
明らかにどっからどう見ても見た目ヤンキーの男が嘘偽りのない本音で夢を語っているのです。それも道に迷う友達のために。他人に自分の夢を話すのがどれだけ怖いのか、勇気がいることなのか言葉には形容し難いとてつもなく巨大な心理的ハードルが立ち塞がります。それも自分に近しい人物に伝えるとなると尚のことその壁は高く厚く立ち塞がります。それでも晋は友達のために伝えた!
このシーンだけでも映画を見て良かったと断言できる名シーンでした!
龍二と八虎と冬の海
1次試験を突破した八虎の耳に入る龍二が試験を放り出して退出してしまった情報。八虎はすぐさま龍二に連絡をとります。最初は無視するも何度もなるスマホに龍二も諦めたのか八虎と通話する。この通話のやり取りで龍二が死のうとしていると察する八虎は間近に迫った2次試験のことを考えつつも龍二がいる小田原の海まで向かう。夜の海に到着するとすでに身体半分を海に浸かった龍二を発見した八虎はすぐさま龍二の元に駆け寄り龍二の目的を阻止する。
2人はすぐ近くの旅館らしき場所に宿泊。ここでも絵を描くのを辞めない八虎に呆れつつ龍二は浴衣を脱ぎ、正真正銘の裸となって八虎にも浴衣を脱ぐように促す。
いや〜、ここのシーンは目の保養になりますね!
いや私は男ですけどね。ハハハ。
冗談まじりに言っているように感じるでしょうが、実際にこのシーンはなかなかに艶やかで色気あふれるものでした。男だけど男が好きな龍二。そんな龍二が浴衣を脱ぐ所作。下着(女性もの)を脱ぐゆったりした動き。これに色気ないというわけには参りません。鮎川龍二を演じる髙橋文哉くんのキャラクターリスペクトが光る名シーンです。
映画を見ていない方のためにネタバラシするとこのシーンはヌードモデルのデッサンを練習する事前シーンでしたというのが残念ながら正体となります。ヌードモデルのデッサンは2次試験の課題なのでそのために前日に練習しておきましょう的なやりとりが劇中では描かれていなかったのですがあったのだと脳内保管しておきます。にしても高橋くんの妖艶な演技のせいで騙されたのは私だけではないはず。
高橋くんの容姿端麗な見た目と線の細さが光るボディラインが相まって女性でも嫉妬するほど可愛く美しい鮎川龍二を演じられていて高橋文哉くんには脱帽です。
エンドクレジットの粋な演出
映画といえばあの長いエンドロールことエンドクレジット。人によってはエンドクレジットが始まった時点で席を立ってしまう人もいますね。気持ちはわからないでもない。尿意の限界とか色々事情がある方もいるでしょうし、自分がお金を払って見ている以上見方は本人の自由意志を尊重して良いと思います。
しかし、『ブルーピリオド』は席を立たずに最後までエンドクレジットを見て欲しい!
ポストクレジットシーンのようなものはないので本編はエンドクレジットに突入した時点で完結していると言って良いです。しかし、粋なんですよこの映画。
WurtSの新曲「NOISE」をBGMにスクリーンに映し出される製作に携わったスタッフなどの名前。この辺はなんの変哲もないエンドクレジットです。しかし、主題歌が終わりを迎えて一般的な作品だと作品を彩ったサントラが流れ出すのが定石のところをこの作品はデッサンの効果音が流れるのです。察しが悪くてもこの演出が意図しているのは東京藝術大学に合格した八虎が油画の作業をしている環境音です。さながらASMRの如く八虎が油画の画材で作業している光景が耳を通して心に浮かびます。
ずるい演出ですよ!
映画の物語は八虎が合格し東京藝術大学の学舎で授業の準備をするところで幕を引く。エンドクレジットでそんな彼が情熱を燃やしているシーンを音だけで表現してくる!
ずるい!こんなの絶賛するしかないじゃないか!
終わりに
今回は映画『ブルーピリオド』をレビューしました。
若手実力派俳優が揃った良作だったと思います。尺がもう少し長かったならペース配分の問題も緩和できて適度に立ち塞がる課題にキャラクターと同じように苦悩し、課題解決に余韻に浸れていたのではと思える点が惜しかった。
そのペース配分の問題を除けばかなり出来栄えの良い実写映画だったと思います。酷評するところはないですね。原作勢の方がどのように見るかはわからないですけど。
少なくとも私の目には原作の名前だけを借りた作品には見えなかった。役者全員が魂を込めてキャラクターと向き合って作った作品だったと思います。
このような実写化作品が今後も増えていけば邦画実写化の未来は明るいですね。
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