【映画レビュー】室井慎次 生き続ける者 感想(ネタバレ有り)

室井慎次 生き続ける者 映画

今回は2024年11月15日より劇場上映スタートした映画『室井慎次 生き続ける者』を鑑賞して参りましたので、その感想記事となります。

前作『敗れざる者』の1セットとなる作品。この作品を見なくては室井慎次の物語を見終えたと言えない。ということで前作で感動した身として期待値を高くして行ってきたわけですが肝心の感想・手応えはどんな感じだったかと言うと・・・

正直、評価に困ってしまいました。

ネットの評判を調べると酷評意見が目立っている。私個人としては酷評するまではいかないと断言できますが、まぁ彼らの気持ちにも察して理解できるものもあります。

単作で評価するのは難しい作品です。前作『敗れざる者』の方が出来栄え良かったのも間違いない。

今作を単品だけでジャッジしたり、『踊る』シリーズの最終フィナーレを飾る作品として評価を下すと辛口になるのも頷けるものがございます。

多分、私も「これが最後です」と公式に宣言されたら「Oh・・・」と溜息を漏らす自信いや確信があります。でもこれで終わりじゃないんでしょ!と思わせてくれる作品でもあったので今の所不安感よりも未来への期待感の方が優っています。


さてさて、前置きはこれくらいにして作品のレビューへと洒落込みましょう。

前作のあらすじ解説

感想評価

まとめ(作品の魅力を厳選)

以上の順でお送りします。

STORY解説

それではまずは作品の物語について。この記事を参考にこれから作品の視聴を検討している方や前作の物語の概要を知りたいと言う方向けに要約してお届けします。

前作『敗れざる者』の概要

前作「敗れざる者」の導入はこんな感じ。
室井さんが警察官を辞職したこと。地元秋田に戻ってセカンドライフを始めたこと。事件の加害者や被害者の家族(子供)の里親として疑似家族の父親ポジションに収まっていることを把握して貰えばOK。

そして、『敗れざる者』で描かれたイベントは4点。

警察官を辞職したのに強引に捜査本部に参加させられる室井さん。前編及びに後編ともそこまで刑事ドラマのテイストを前面に押し出しているわけではないですが、「踊る」シリーズの後継作として刑事ドラマ要素は必要不可欠。前作で決着が付かなかった遺体遺棄事件の犯人が後編で誰なのか、どう捕まるのかも見どころの一つ。

男所帯であった室井家に紅一点加入。といえば色気のある表現になりますが、実態は室井家のバランスに変化をもたらす厄介者の訪れといった印象を受ける作劇でした。前編エピソードでは室井家を荒らすよそ者という印象を残した彼女は後編でどのように観客の心象に残っていくのか・・・。

前編のハイライトであったタカの成長。私はタカの成長に涙しました。母親を奪った犯人と、その犯人の刑期軽減のために尽力する弁護士と向き合い大人として精神的に成長する姿に涙を抑えることができなかった。後編で彼の見せ場がどうなるのかの注目すべきポイント。

そして、映画のラストで迎えたショッキングな出来事。室井家車庫に火が放たれる。室井さんのシンボリックなアイテム=黒のコートも綺麗に燃えています。

以上で前作のおさらいは完了とさせていただきます。

後編を読み解く3つのストーリーライン


さて、後編エピソードとなる『生き続ける者』では大きく3つのストーリーラインがあります。
メインストーリーラインとなる室井家の在り方。サブストーリーラインとなる遺体遺棄事件の解決と集落の人々との溝がどうなるのか。

前作ではタカの事情については決着がつき、残るは2名。現状、室井家に馴染めていない杏。彼女が抱える母親:日向真奈美からの呪縛。そして、日向真奈美よりもタチが悪い問題となるリクの父親との衝突が待ち受けています。

かつて湾岸署を占拠した無期懲役判決の女。獄中に囚われているのにも関わらず存在感は衰えることなし。彼女が遺体遺棄事件とどのような接点を持っているかも重要なポイント。

前作で溝が深いことが念入りに描写された集落の人々との関係もしっかりと決着が描かれるます。

感想(⚠️超重大なネタバレを含む)

さてストーリの解説を終えましたので、本記事のメインディッシュ。感想を述べていきましょう。

まずは結論から。ということで作品の面白さをランク付けしてわかりやすくしてしまいましょう。

【A-】という結論に落ち着きました。。
前作を評価するならば【S】だったので結構差があります。それでも酷評する気が起きるクオリティではなかったのでそこそこ良いという評価になりました。期待値高めだったので少々残念ではありますがね。

それでは結論をコメントしたので、具体的な感想を述べていきましょう。

感想PART1:映画序盤編

序盤にて描かれた展開で印象深かったのはタカの悲恋というか失恋。いい感じであったクラスメイト大川さんを家に招く時の顔の砕け具合は可愛かったですね。そして、そこからの急降下具合も凄まじかった。大川さんの父親からの意見によってそれまでの距離感が一気に崩壊。大川さんは別の男にとっとと切り替えているというドライっぷりもエグい。

大川さんの父親が登場したので、そのまま杏の家族について。
彼女の母親はあの日向真奈美。杏が真奈美に強く影響を受けているのは想像に難くなく、血の繋がりという切れない縁、月に1回の面会、唯一の肉親、それらが噛み合いの他人に対して歪んだ価値観を抱くに至っている。もはや呪いと言っても過言ではない。

真奈美だけでなくリクの父親も別のベクトルで呪いと呼んで過言でもない存在になっていて、まともな親が碌に登場しない作品です。

だからこそ、実際に血のつながりはないけれど懸命に父親としての責任を果たそうとする室井さんが輝く。

序盤は正直、嫌な心象を受ける登場人物が多いです。そんな中に綺羅星の如く輝く人物がいるのも事実。商店主の「市毛きぬ」さんの善良な精神・態度・言葉の数々には心洗われるものがありました。

感想PART2:映画中盤編

さて、映画中盤の感想に突入です。テンポよく進めていきましょう。

きぬさんに続き、今作の癒し枠。乃木真守。このキャラ良いですよね!

顔に裏表ないって書いてある!善人オーラしか出せない。そんな男。勉強したくないけど、刑事になりたいという。そんな願望を真剣に室井さんへ伝え、その問いにちゃんと答えようと眉間に皺を寄せる室井さんのくだりは大好きです。

杏が室井家に正式加入する転機となった猟銃のくだりも素敵でした。あれだけ必死に金庫を開けようとしていた杏に、自ら金庫のロックを解き法に触れると知りながらも引き金を弾かせる。

そして、その発砲の衝撃を重く受け止める杏。武器の怖さと人の恐ろしさを重ね、人との向き合い方を説く室井さん。良い名シーンに出会えたと胸を張って言えます。

児相の判断は正しかったのだろうか・・・

そして、最も厄介なリクの問題。リクの父親が刑期を終え帰ってきたことで室井家に大きな波紋を呼ぶこととなる。これに対して児童相談所の判断は正しかったのか否か。観客という神の視点でリクのかつての境遇を目の当たりにし、これまでの室井さんの父親ムーブに心揺さぶられてきた身として児相の決断は正直支持できない。だが、彼らの知っている情報と観客が持っている情報に大きな格差があるのも事実で責めることもできない。うーん、悩ましい。

感想PART3:映画終盤

さて感想も大詰めです。

やはり賛否を呼ぶのはこのクライマックスの展開でしょう。なんせ室井さんが辿る末路がこんなエンディングだとは思わないじゃないですか。

帰ってきて家族一緒に入浴して、談笑しながらまた4人で食卓を囲む。

そんな光景を見たかったに決まっている。

でも、室井さんは帰ってこなかった。リクの父親がシンペイを野に放ってしまったばかりにファンが望まない結末を迎えることになる。室井さんの体調が万全であれば異なる結果になっただろうし、様々な要因が絡んでいることに間違いないが、どうしてもリクの父親にヘイトを向けたくなる自分がいる。

しかし、室井さんはそんな誰かにヘイトを向けることは望まないでしょう。彼は示した生き様は誰かにネガティブな感情を向けるよりもポジティブな感情で接していくことが未来に繋がると訴えていたのですから。

その証拠にあれだけ険悪だった集落の人々が最後に手を合わせに訪れる。商店でやんちゃをしていた若者も訪れる。何より、室井さんを慕ったタカ・リク・杏の3人が暗い顔見せずに前進しようとしているのだから。観客である私たちも彼らを見習わなければですね。

そうすれば、室井さんの意思は誰かの心の中に「生き続ける」のだから。こういう形でタイトルを回収するのは下手だけど嫌いじゃない!(むしろ好物)

さて、映画というのはいつだってエンディングを視座して見届けたものに褒美を遣わす!

今回ほど、最後まで退席しないで良かったと思わせてくれる映画はなかった!

あの男の帰還。不可能に思えたあの俳優の再演が叶った。もう言わなくても読者の脳裏にあの男との顔・声がポップアップしていることでしょう。

そう、青島です。織田裕二です。

やはり室井さんが去る結末を迎えた今作で、この男を出さないという選択はないでしょう。よくぞやってくれた製作陣!よくぞここまで隠し通してくれた広報スタッフ!

あの見慣れたグリーンのコートの後ろ姿を見た時、それはもう興奮しましたよ。そして、青島が室井さんの椅子にたどり着けていないことも超重要です。

まだ挨拶する時ではない。

つまり、そういうことで良いんですよね?

まとめ

それでは最後にまとめといきましょう。

今回レビューしたタイトルはこちら。映画『室井慎次 生き続ける者』。

実際に鑑賞して作品の魅力だと感じた部分を厳選して紹介します。

本作品は前作『敗れざる者』に引き続き、室井慎次という男に魅力に溢れた作品でした。警察組織を改革するという約束を守れなかった。言わば敗北者とも言える男ですが、映画を目の当たりにした方にはこの男に敗北という2文字は相応しくないということを実感していただけること間違いなし。

組織を離れても室井慎次の生き様に変わりはありません。彼の誰かと向き合う姿勢は多くの人の心に響く力があります。

警察官として誰かを疑う日々を過ごしてきた男が、警察を離れて辿り着いた答えが「人を信じる」こと。その信じるという口に出すのは容易く、実行するのは至難という行為を貫き通した男の生き様がこの映画に記されています。

映画中盤。かつて湾岸署を占拠した日向真奈美を母に持ち、人を信じることに強い抵抗を感じている少女:日向杏に向けて発した言葉に彼の信念が詰まっています。

人を疑うのではなく、信じる道を選んだ元警察官:室井慎次。彼が里親となって短い期間だが一つ屋根の下で過ごした少年少女との繋がりは家族と呼ぶ他ならない。

そんな彼の生き様が周囲に与えた変化・影響を味わい尽くすことができる映画。
それが『室井慎次 生き続ける者』。

組織と現場の間に立ち、挟まれ、変化を起こそうとした男。その最後の物語。その男が最後に何を変えるのか・・・。

それでは今回は以上となります。お時間いただきありがとうございました。

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