今回は2024年12月13日より劇場公開された映画『はたらく細胞』を鑑賞してまいりましたのでその感想記事となります。
メガホンを取ったのは竹内英樹監督(代表作:テルマエロマエ/翔んで埼玉)。実写作品の実績は文句なしのお方の最新作ということで割と期待値高めで鑑賞に臨みました。予告編の出来も信頼に値するものでしたし。
映画前半。良いところもあるのですが、期待値に対してイマイチ乗り切れない部分も目立つ印象。
この勢いのままエンドクレジットに突入したら凡作の烙印を押さなくてはならないと不安でしたが、後半で見事に巻き返してくれた。
前半のチグハグ感を収束していくストーリーテリングに感心できた次第。
アニメを視聴していた身としても世の中に良い実写化が一作品増えたことにも一安心。
本記事では実写化によって生まれた旨味を掘り下げていこうかと思います。
作品のストーリーの流れの解説の後、作品レビューに移行。最後に本記事のまとめとして作品の持つ魅力をプレゼンしていこうかと思います。
それではよろしくお願いします。
ストーリー解説(⚠️ネタバレ注意)
それではChapter1開幕。
手前味噌ではありますが、大雑把に作品のストーリーラインを列挙していきます。
映画前半は概ねこんな感じ。全体的にコメディ色が濃かった印象。
身体の内部と外を行ったり来たりする作劇ハンドリングが少々厄介でもありました。漆崎親子2名それぞれの物語とそれぞれの身体内部の細胞の物語。4つの軸があるのでどうしても物語が散り散りになってしまった感がある。
前半のクライマックスとなった漆崎茂の身に起こった争い。予告編でも印象深かったあのシークエンスがまさか前半の山場となるとは思っていなかった。それなりに尺を設けられていて阿部サダヲさんの表情芝居が思う存分楽しめたと思います。
後半戦は一気にシリアスに舵を切ってきた。
実に重い題材を取り扱うので当然と言えば当然です。前半とのギャップがすごいですが作品として別物になったわけではないように丁寧に後半戦にシフトしていったので問題なし。
人間ドラマパートが良い味を出し、それに影響を受ける形で細胞たちの物語がヒートアップしていくのは見事なシナジーでした。
感想(⚠️ネタバレ注意)
それではChapter2に参りましょう。
作品評価【S+】
今回の評価はS+。
実写化として当たりな部類の作品に仕上がっていたとは思いますが、予告編を超えるほどのインパクトには欠けていたこと。竹内監督の作家性がそこまで発揮されていなかったことを鑑みるとS+が妥当という印象。
フェイク予告でも構わなかったので、作品が持つシリアス成分を秘匿したまま公開に辿り着けていたらもっと上に評価を改めていた可能性があります。これは作品プロモーション戦略によるところが大きいので監督の手腕といより広報を担っているプロデューサーの采配が評価を左右したといったところでしょうか。
映画前半はどこかチグハグであった
Chapter1でも少し触れましたが改めて。映画前半パートはどこかチグハグな印象を受けます。
物語を展開する軸が4箇所もあるので誰が主人公なのか分かりづらい。これが足を引っ張ってしまっていた。前半に観客感情を作品にライドさせる仕掛けが不整備であったように思えてならない。
どこの人間ドラマパートと細胞ドラマパートもどちらも対等に取り扱っているので作品がどこを目指しているのか理解できないまま物語が進行していくのでモヤっとしてしまいました。
後半は前半のチグハグ感が収束していく
後半はベタ褒めしても良い!そう感じました。
前半で4箇所で展開してきたドラマが1つに収束していく。物語のゴールが明確となってニコを救うために全キャラが物語を推し進めていくエンジンになっていくので感情を移入しやすいことこの上ない。
漆崎茂が自分の身体を二の次にして働いていたのかが判明してから作品の方向性がくっきりとわかるようになり本作品は父と娘の親子関係こそ作品の中核に位置すると理解する。
そこからはW赤血球の合流や細胞たちが繰り広げる激闘などが相まって感情のドリフトが止まらなくなっていくのですよね。
お気に入りシーン3選
本作で心にグッと残ったお気に入りのシーンを3つほどご紹介。
アニメでも可愛さが天元突破していた血小板ちゃん。実写でもそのビジュアルこそ異なれど可愛さは再現できていたといって良いでしょう。
これはずるい。これがイマイチだと言える人はいない。
続いて映画のラストを締め括った再会(?)の場面。
佐藤健さんと永野芽郁さんがそれぞれ同じ細胞役職だけど違うキャラとして顔を合わせるシーン。黒い髪の毛や装備品が刀になっているなどの差異があり別キャラだとわかるのだけどキャスティング的に同一人物だと匂わせてくる良い塩梅。
この2人がいるということは他のキャラクターも・・・・・・・
という考察の余白が生まれるのが実に映画的で後味の良いシーンでした。
最後に最もグッときた本作のハイライト筆頭候補となったシーン。
床に伏した漆崎日胡を励ますために父:茂と彼氏:武田新が声の届かない環境でスケッチブックでメッセージを送る場面。
これは心に響く。前半でダメ親父っぷりを発揮してきたことが見事な伏線となって名シーンへと昇華を遂げている。自分の好きなものはと🍺・🚬・🍜など健康的にどうなのよ? というものを出してきてからの一番好きなのは娘である日胡の笑顔。
娘のために学費を稼ぐ姿勢といい、マフラーを不器用ながら仕上げる根気といい本当に良き父親であったと思います。
その他雑感
感想の最後に細かい雑感について触れていきましょう。
予告編でも散々描写されていたWC(トイレ)への道のりについて。これは幾度となく予告編を見ていたので映画本編ではそこまで面白く思えないと思っていたのですが、なんやかんや面白かった。
加藤諒さんの熱演や思いの外長丁場での闘いだったことに虚をつかれたのが好印象の由縁です。
予告編で印象深かったミュージカル要素。こちらについても思いの外、尺が短かった。尺は短かったが実写ならではのスケール感でお出しされる情報量のボリュームは見応え抜群。
日胡の体内世界観が洋風である点。これはナイス選択であったと絶賛したい。最初はなんで洋風なんだろう?と首を傾げながら観察していましたが、答えに辿り着くと納得しかない。
本作は現実世界・日胡の体内世界・茂の体内世界。合計3つの世界が登場する。その3つとも異なる外観に仕上げられていたので物語を多方面で展開する本作の作劇をわかりやすくする仕掛けとしてうまく機能していたと思います。
父:茂の体内世界は昭和レトロ全開であったこともユニークでした。
まとめ&プレゼン
さて大詰めです。最終チャプターまとめ&プレゼンといきましょう。
今回レビューしたタイトルはこちら。映画『はたらく細胞』。
本タイトルの魅力をまとめるのならばアニメやコミックになかった実写ならではの付加価値であると言えます。
その付加価値は以上の3点。
今回初となる身体の持ち主サイドの物語が展開されたこと。コミックやアニメ見ていてこの身体の持ち主は一体どんな人物なんだと疑問に思ったそこのあなた!
その答えが映画にあります。
人間ドラマなんて不要だろと勘繰る方もいっらしゃることかと存じますが、必要不可欠です。一見ダメな親父に見える人物:漆崎茂の父性は胸を打つものがあります。
実は『働く細胞BLACK』の映画化でもあった本作品。両タイトルを結ぶ架け橋としても人間ドラマが大きく貢献しています。
身体の内外を何度も行き来する作劇をする本作品。視覚的にどこで物語が展開されているか非常にわかりやすく表現している点も本作の魅力です。日本人キャストが洋風な世界にいる不思議な感覚が妙にマッチするのです。
他にも魅力は複数ございます。佐藤健さんの身体能力をフル活用したアクションシーンや原作キャラクターを再現したキャスト陣の表現力などあげれば語り尽くせないので、作品の旨みの全てを堪能したい方は是非本編に触れていただくことを推奨します。
それでは今回は以上。お時間いただきありがとうございました。
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