好きなお菓子は柿ピー。(🥜ピーナッツは最後に食べる派)
おはようございます😄映画レビュアーのあーさんです。
今回は2024年9月13日より劇場公開された三谷幸喜監督&脚本の最新作『スオミの話をしよう』を鑑賞してまいりましたので、その感想記事となります。
率直な感想を言います。
イマイチです。
微妙です。コメディ映画としての空気・雰囲気作り・温度管理に失敗しているといって良いです。
だから、この記事ではズバッと🗡️切らせていただくことになります。後半は良いところに触れますが記事の前半は辛口です。
優秀な役者陣を揃えることに成功したが、作品の味付けに失敗した感は否めない。同じ脚本であったとしても別の監督がメガホンを取っていたら違った結果になったかもしれない。そういったポテンシャルを感じなくもないですが結果として出来上がった作品は今ひとつコメディ映画として微妙だったと言わざるを得ない。
駄作じゃないけど、間違いなく微妙な作品として仕上がっています。なんというか出来立てホヤホヤの適温で食べたら美味しい料理を冷めて温くなった状態で食べてしまったみたいな感覚です。むしろ駄作だったらそれはそれで友人とのトークの種として美味しく育てることができるのすが、駄作レベルに至っていない絶妙な微妙な完成度なのがタチが悪い。
何がイマイチだったのか具体的に綴っていきましょう。前半はネタバレ無しの作品分析。後半はネタバレ込みの詳細な感想について触れていきます。
面白さ:星*4 ★★★★☆☆☆☆☆☆
まずは物語に関して。冒頭で述べた通りイマイチです。とてもイマイチです。富豪の妻が突如失踪したというミステリー要素を孕んだストーリー展開とその妻を取り巻く元旦那たち5名が繰り広げるドタバタ劇が本作の売りなのですが、ミステリーもイマイチな落とし所だしドタバタコメディ要素も今ひとつ盛り上がりにかける。
全くつまらないわけでもなく部分的には面白い場面もあります。しかし部分的止まり。全体を線で結ぶと驚くほど平坦で単調な物語だし、あっと驚くサプライズ要素もない。線ではなく点で振り返るとあのシーンはよかったなぁと言えるので星*4が妥当かな。
まるでコントを見ているかのような映画体験
この映画を見ている時の私の感覚は映画を見ているのではなく芸人さんのコントを見ている感覚にかなり近いです。
作品のメイン舞台となる寒川邸がロケーションの8割を占めており、回想シーンを除くほとんどの場面が寒川邸の豪邸。故に背景に変化が乏しい。
またこの映画では度々長回しにより1カット演出が多用されています。1カットでシームレスに役者の芝居を見せつけられる。これ自体は役者のポテンシャルに触れることができる贅沢な体験ですが、これがカットの切り替えの乏しさを招き舞台感&コント感を増長させてしまってもいる。
意図的なのかは不明ですが、映画を見ている感覚を削ぎに来ているように思えてならないのですよね。映画を見ているのだから、コントを見ているという感覚には退場願いたい。そういった意味ではこの感覚が押し寄せてきていることは評価を下げるポイントです。
矛盾や破綻はないと言って良い脚本(ご都合主義に目を瞑って・・・)
作劇場に目立った矛盾や破綻は確認できませんでした。そこは三谷幸喜脚本家といったところでしょうか。
しかし、ご都合主義的な舞台装置や人物設定も目立ちます。このご都合主義的要素が作品のコント臭をパワーアップさせてもいる。
あまりにレトロな逆探知機はスオミの誘拐事件をゲームセットまでにたどり着けかせるのに時間稼ぎ要素として大きく貢献していました。他にも寒川の📶電磁波アレルギー設定はスマホを作品から締め出すなどスマホ一つで事態が一気に解決に向かう展開を阻止する役割を担っていた。
極め付けはスオミのソウルメイトである人物の設定。👩彼女のハイスペックっぷりは正直謎です。このハイスペックなソウルメイトがいなかったら物語はそもそもスタート地点にすら立っていないであろうレベル。
こういったご都合主義要素に目を瞑れば物語の流れそのものにはケチをつけることはできないです。
あとはご都合主義をどこまで咀嚼できるか観客の懐の深さ次第といった印象でしょうか。
キャラクター:星*5 ★★★★★☆☆☆☆☆
映画において最重要ファクターとなるキャラクター。ここに関してもこの映画は弱い。観客の心に焼き付くような爪痕を残してくれるようなキャラクターは不在です。
メインとなるスオミ。その旦那たち5人。脇を固める小磯や乙骨さん。どのキャラクターもそこまで引き込まれる魅力を感じないのは致命的です。
各キャラの味付け自体は大味で濃口です。わかりやすいキャラクター造形になっている。しかし、それが物語を色彩豊かに彩ることには繋がっていないし、物語を加速させ山頂からの絶景を見せる推進力にもなっていないのです。
スオミというキャラクターがそもそも深みがないように思います。スオミが芸達者な人物であることは間違いないが、彼女の根底にある行動理念・信念が観客の心に訴えかけるレベルの熱量を持っていないので作品全体のエネルギー量にブレーキをかけてしまっている懸念がある。
そうなると当然、周囲の登場人物にも影響が出てくる。類は友を呼ぶというかスオミの周りに集まった人間はスオミのエネルギー量にちょうど良い人物ばかりだったように思えます。
役者の芝居:星*9 ★★★★★★★★★☆
役者陣の芝居は見事です。各々キャラクターに息吹を吹き込んでいました。
やはり特筆すべきは1人6役は少なくとも担当していた長澤まさみさん。
もはや長澤まさみ劇場と言っても過言ではないクライマックスの芝居の振り幅は彼女の役者魂が滲み出ていて素晴らしいです。
5人の元旦那チームに関しても一人一人曲者揃いで味の濃い人物ばかり。でもその一癖も二癖もある人物たちを俳優の方々がしっかり地に足ついた人間としてアウトプットしているので作品のリアリティを支えてくれています。
どの登場人物もこの世界に本当にいそうなディテールなんですよね。💰どけちな金の亡者、👮几帳面な刑事、👮♀️人情派なダメ刑事、🎥胡散臭いYouTuber、🧑🏫人相は悪いのに人柄は良い体育教師。
このメイン5人を演じた5人の俳優さんにも拍手です。
魚山大吉:遠藤憲一
十勝左衛門:松坂桃李
宇賀神守:小林隆
草野圭吾:西島秀俊
寒川しずお:坂東彌十郎
しかし、欲を言うと芸人畑出身のキャスティングを1〜2名ほどした方が作品のテイストにマッチしていたし周囲の役者陣に良い影響を与えたとも思えてならないのですよね。
う〜ん、惜しいなぁ・・・。
音響:星*8 ★★★★★★★★☆☆
音響については褒めます!
やっぱり映画館の音響から発せられる足音などの環境音は良いです。私の大好物であるという贔屓目を外してもこの音響は映画用にチューニングさせていて没入感を向上してくれます。
この辺の没入感に対する配慮は監督である三谷幸喜の映画というメディアに対する理解が深いという証拠なのかな〜とか思いますね。
映画冒頭のシーンで意図的にBGMをなしにする場面を用意してくれているのでそうであると信じたい!
コメディーレベル:星*5 ★★★★★☆☆☆☆☆
コメディー映画なのに星*5というなんとも普通ラインをマークしてしまいました。
でもこれ以上、上げる気も下げる気も起きないのですよね・・・。
狙ったあからさまなギャグを登場人物がかましてくるということは殆どない点は高評価できます。意図的にこちらの感情をコントロールしてこられると白けますから。
登場人物たちは真剣な調子でスオミの失踪事件に向き合っているので、真剣と真剣がぶつかることで生まれるコミカルがこの作品のコメディーレベルを左右します。しかし、そこまでコミカルな場面に発展しないし、かとって真面目すぎる感じにならないしなんとも微妙なんです。
これは実際に体感してみて欲しいが、笑いを求めて劇場に足を運ぶことをお勧めできないのがジレンマですね。
この作品に流れる絶妙に微妙な感じ。役者陣に演技力優れる俳優ではなくコントを得意とする芸人を数名起用するだけで改善できたのではと思ってしまう。
ミステリーレベル:星*2 ★★☆☆☆☆☆☆☆☆
ミステリー要素に関しては予告編の段階で醸し出していたけれど、蓋を開いてみると「そんなもんかい」というオチに着地する。
この映画に奥深いミステリーを望んで観に行く方がいらしたら、その考えは早めに捨てておくことをオススメします。
感想
ここからはネタバレありで具体的な感想を述べていきます。私の心に残った良いシーンについて触れていこうじゃありませんか。
【思わず笑った】ハイライトシーン候補:デカすぎる🍷ワイングラスを携えた仮装芸人の登場
これは見事な不意打ちでした。
映画中盤あたりだったかな?過去の回想シーンで仮想パーティーに出席するスオミや第3の旦那。そこで急に現れたのが石原裕次郎のモノマネ芸人ゆうたろう。ゆうたろうのまんまの登場なのでトレードマークであるデカすぎる🍷ワイングラスも一緒に登場しています。
彼の出番は全く予期していなかったし、ただ登場するだけで面白いのだからズルいよな〜(笑)
【いや、そうはならんやろっ!】✈️セスナ機からの転落&復帰劇
予告編でも確認できるセスナ機での一幕。空中から身代金を投下するシークエンスで事件が起きます。
なんと瀬戸康史くんが演じる小磯刑事がセスナ機から転落するというハプニングが発生。
そして、落下して助からないと思っていた彼はたまたま手にしていた凧のようなアイテムで忍者のように空中浮遊しセスナ機に回収されるという奇跡の生還劇が起きるのです。
いや、そうはならんやろっ!
と、ツッコミを心の中で叫んでしまいました。
【そのクレジットはずるい!】5.5の男
映画お決まりのエンドロールの前にエンディングダンスの一幕があります。そこでは各キャストが何番目のスオミの旦那になったのかクレジットされるのですが、5.5と表記される男がいるのです。
これには思わず笑ってしまった。
だってあれだけスオミに対して尽くしていたのに5.5なんだもの。6番目の男がいるので尚更彼の不憫さが際立ち面白いと思ってしまいました。
シュールなエンディングダンス
全校でも少し触れたエンディングダンス。長澤まさみが歌唱し、さながらミュージカルのような演出。そこで今作に登場した役者陣が長澤まさみのバックダンサーとしてダンスを披露するのですが、これがまぁシュールです。
だって遠藤憲一や西島秀俊のようなダンスと縁のなさそうな人物が真面目で真剣な顔つきで踊っているんだよ!?
これで笑うなというのが無理な話です!
(少々偏見が入り混じってしまっているので遠藤憲一さんや西島秀俊さんがダンスを嗜む方でしたら全力で謝罪します)
【伏線の仕込み方が巧妙】意図的にクライマックスから省かれ、美味しいところに着地する瀬戸くん
最後は瀬戸康史くん演じる小磯刑事の顛末について。
彼はクライマックスでは席を外すことを強要される不憫なラストに終わるかと思いきや、作品のラストを彩る美味しい役どころに着地するのです。
そう、スオミの6番目の男としての席を勝ち取ります!勝ち取るという言い方が適切かどうかは不明ですけどね(笑)
彼は何故かクライマックスの場面での同席を許されずに、事件の渦中の人物であるスオミとの対面を逃してしまう。これが伏線その2として機能していたとは思わなかった。
順番が前後してしまいましたが、伏線その1について触れます。映画中盤で乙骨と小磯がマッチングアプリについて話し合い盛り上がる場面があります。これは4番目の旦那:十勝がリリースしているアプリであると判明したことで伏線としての役割を終えていたと思っていたのですが、まだマッチングアプリは伏線として機能し続けていた。
今回の誘拐事件が幕を下ろし、スオミは5人目の旦那と離婚する。そして、小磯がマッチングアプリを活用して彼の前に姿を現した人物こそスオミというオチ。
伏線その1を一度処理したと思わせる手腕と伏線その2が仕込まれていたと悟らせないストーリーテリング。流石は三谷幸喜。やりよる!
終わりに
今回は三谷幸喜監督&脚本の最新作『スオミの話をしよう』をレビューしました。
正直イマイチな作品であることは間違いないです。
無茶苦茶笑えて、無茶苦茶歯応えのあるミステリーを期待している方にとっては肩透かしを食らうかのような感覚が胸を支配してしまう。
かくいう私もその1人。
幸い、ネタバレなしの感想をX(旧Twitter)で目にしていたので、心構えができていたことが救いでした。
しかし、駄作と断じる気も起きません。部分部分で見れば面白いシーンもあります。
なので個人的には見たことに対する後悔はないです。しかし、三谷幸喜監督には今回の作品についてはしっかりと反省して欲しいですね。
今作が彼の最終作でないことを祈って、次回作で三谷幸喜ここにありと言わしめて頂きたい!
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