おはようございます😄映画レビュアーのあーさんです。
今回は2024年10月4日より劇場公開された映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』IMAX版を鑑賞して参りましたので、その評価&感想の記事となります。
まずは率直な感想を述べます。
これはすごい映画を観てしまったと感嘆に浸れる超傑作映画でした!
すごいです!
画面の画作り・役者の芝居・音響・劇伴・BGM・ロケーション・衣装・メイクなどの映画を構成するありとあらゆる要素は⚙️ギアのように噛み合い高次元の映画体験を実現してくれました!
今回は絶賛記事となる予感がします!
不親切で説明不足な導入やここで終わるのかというラストショットなど賛否分かれそうな箇所はあるのですが、私個人としてはそういった説明不足な部分含めてこの映画のクオリティに貢献していると感じました。題材が🇺🇸が分断し内戦が起きたら・・・ですから意図的に説明不足を設けたように思えてなりません。その説明不足な部分を観客がどういった意味で捉えるか・・・という要素も含めて監督からの映画体験のプレゼントであったように思います。
さて、そろそろ本題に突入しましょう。
前半はネタバレなしで映画全体のクオリティについての評価。
後半はネタバレを含んだ映画の内容について感想&考察をしていきます。とはいっても私は考察が苦手な口なので深い考察ができないですが、栄華を観て監督から「考えろ」と言われたような気がしたのでやらないわけにはいきません。
それではいきましょう。
評価まとめ
上記画像が今作の評価をまとめたものとなります。
全体的に超高評価です!
限界突破の評価を下しているところが5項目もあるのは相当すごいです!ここまで高水準な作品も珍しく2024年が残り2ヶ月ございますが、年間ベスト1候補筆頭候補に躍り出てきたといって過言ではないですね。
主観的満足度:星*12
私は戦争映画好きなのもあって満足度が非常に高いです。
因みに好きな作品を数点リストアップしますと
- ダンケルク
- フューリー
- 1917 命をかけた伝令
特にこの3作品は生涯のお気に入りです!
本作品=『シビル・ウォー アメリカ最後の日』は上記三点に並ぶ作品になりました。
本作品の魅力は戦場カメラマンというジャーナリストの視点で物語が進行していくという点と架空の戦争が題材となっている点。
戦争映画は伝記映画としての側面が強い傾向があり、歴史的に知名度の高い戦争を映画というエンタメに落とし込むというスタンスが鉄板です。本作品はIFの戦争を取り扱っているのに圧倒的リアリティで観客を戦争の世界に没入させてきます。
銃火器を取り扱う人間の精神性・舞台となっている米国の大地
以上の2点が現実と地続きの延長線上のものなのでフィクションなんだけどフィクションとは思えてこないパワーが秘められています。
圧倒的リアリティを支えるもう一つのファクターとして重要なのがメインキャラである戦場カメラマンのメンバー。彼らが戦場を目の当たりした時のリアクション・感情が観客の心に強く突き刺さるほど強烈で共感を呼び起こすもので作品への没入感を数段跳ね上げてくれます。
ここまで作品に強く心を揺さぶられる体験は極めてレアでした。よって大満足の星*12という評価となります。
高評価ポイント①役者の芝居
本作の主演4名の演技力・表現力は大変素晴らしい。
特にジョエル役ワグネル・モウラに圧倒されました。彼は戦争が起きているこの状況を楽しんでいる節がありつつも戦争で起きる悲惨な出来事に慟哭する一面も持っていて非常に多面的な人物。
そのキャラクター性を見事に表現し全身全霊で役を演じていたワグネルの役者魂に触れられたという意味でも今作を見て心から良かったと思います。
また、ジェシー役のケイリー・スピーニーの演技も大変良かった!
レギュラー陣の中で23歳というジェシーは未熟さの際立つキャラクターで、内戦で起こる惨状に繊細なリアクションを求められる役所。ケイリーはこの重要なポジションを見事やってのけ、観客に戦争に惨さをダイレクトに伝えてくれました。
これほどの名演を堪能できたのですから評価は限界突破するしかないです!
高評価ポイント②音響(IMAX)
IMAX版を鑑賞したので、音響品質は約束されたも当然だったのですが、想像を絶するクオリティで圧倒されてしまいました。
いやもう凄いのです!
銃弾の発砲音の重厚感や乾いた音の響き方が臨場感・没入感をグッと際立てる!
🚁ヘリコプターのシーンも直ぐ側にヘリコプター実機がいるのではないかと錯覚させる音の存在感は圧巻です!
高評価ポイント③映像美・撮影技術
残酷なシーンが要所要所で登場する本作品ですが、相反するかのような美麗さに見惚れてしまうような美しいショットも点在していて驚かされます。
戦争映画でここまでアーティスティックな画作りをしてくるという驚きもありますし、残酷な光景も見方を変えると芸術性を持ったアートに変貌してしまう恐ろしさも同居しているように感じました。
高評価ポイント④舞台・ロケーション
前項の映像美と重複する要素ではあるのですが、本作品はロケーション選出がずば抜けて良かったです。どれも印象に残る場所ばかりで予告でも確認できる場所だと
- ヘリコプターが飛行する川辺
- サンタのオブジェクトが確認できるスポット
- ワシントンDCの市街地
などなど。
様々なスポットが本作の舞台となっています。
本作はロードムービー的側面も持っているのでレギュラー陣の移動に応じて様変わりするロケーションの変化は見ていて飽きがやってこない効果をもたらしていたことも高く評価すべきポイント!
高評価ポイント⑤戦争描写/演出
本作品は戦争描写として殺陣を組み立てているので所謂「見栄を切る」ような場面は一切なく徹底的に軍事的アプローチで戦争を演出する採決がされています。
戦場に木霊するのは銃火器の発砲音と兵士たちの号令。そこに戦場ジャーナリストである主要メンバーのリアクションなどが付随する戦場の臨場感は凄まじい!
意図的にBGMをOFFにして戦場にだけ生じる音声・環境音のみを採用した場面作りも臨場感を底上げする効果があって監督の演出手腕に脱帽です!
感想&考察(⚠️ネタバレ有り)
さて、ここから先はネタバレを含んだ感想コーナーとなっております。
ネタバレNGの方はご注意ください🙇
最も戦慄した問答シークエンス
映画中盤の山場となった赤いサングラスの男との問答シークエンス。
このシーンの緊張感・緊迫感・死との距離が0に近づいている感覚は圧倒的でした。
赤いサングラスの男らに囚われたジェシーともう一人の男(名前がわからん)を救うためにサミーの静止を無視して救援に駆けつけるリー・ジョエル・トニー。
言動を少しでも踏み違えると赤いサングラスの男が携えるライフルから火が飛ぶリスクが常に隣り合わせの状況で必死に冷静になりながら言葉を選ぶジョエルの姿が脳裏に焼き付いています。
状況の過酷さで言えばこの後待ち受けるホワイトハウスのシークエンスの方が圧倒的に過激ですが、精神的追い詰められ感で言えばこのシーンがダントツNo.1。
誰が死ぬのかわからない恐怖が常に付き纏い一人・また一人と散っていく様は息を呑んで見守るしかない観客にも辛い。
- そんな状況に風穴を開けたのが、高齢ゆえの身体的ハンデキャップを背負ったサミーが車を運転し赤いサングラスの男に衝突するという離れ業。
- 車の衝突に巻き込まれてジェシーが後方の墓場に転落し、彼女の足元に並ぶ死体の山の数々のインパクト。
- その死体の山から必死に移動し墓場から脱出して4人揃って乗車してからの脱出劇。
- どうにか脱出した後にジョエルは友人ジャーナリストがなくなってしまった事実に叫び、死体の山を目の当たりにしたジェシーは車内で嘔吐。
- そして、サミーが脱出中の敵からの発砲により致命傷を受け帰らぬ人になる。
この中間の山場で一気に3名ものジャーナリストの命が散った。
赤いサングラスの男の狂気も尋常ではなかったし、最初に建設的な判断をしていたサミーがレギュラー陣の中から最初の脱落者になってしまったという事実があまりにも残酷でした。
戦争の非情さ・無情さを1カットに凝縮した画面構成力の高さ
赤いサングラスの男らから脱出した一同がWFの拠点らしき場所に辿り着いた場面。
こちらのショットは予告編でも確認できるのですが、予告編と映画本編では画面が語りかける破壊力が別次元すぎて衝撃を覚えました。
- 友との唐突すぎる別れに感情を抑えきれずひたすら慟哭するジョエル。
- そのジョエルのバックに無表情で前進していく兵士たちの列
- このシーンの台詞はOFFにするという演出がされていてジョエルの叫び声は観客にも全く届かない
ジョエル役のワグネル・モウラに圧倒的表現力で音声がないのに感情が120%伝わってくるんです!
そして、観客にはちゃんと届いているのにそんなものがないかのように無表情で全身を続ける兵士が戦争の悲惨さを物語っている。彼ら兵士にとってはジョエルのような人物を見るのは日常茶飯事で珍しくもなんともなく反応する意思が湧いてこない。
この事実が戦争の異常性を表現していて、本作品で最も印象に残ったシーンでした。
考察①:意図的に伏せられた内戦の理由
本作の導入は🇺🇸大統領がスピーチの練習をするという場面から始まった。
その後の場面でもなぜ内戦が勃発しているのか理由について言及されることは一切なかった。
少々不親切です。観客としてはどうして内戦に至ったのか気になる。何か対立する理由があるはずなのにそれが全く見えないまま物語が進行していく。
私はこの理由が明示されなかったことは結構重要な監督からのメッセージであるように思いました。
監督から
「戦争・内戦が起きる理由なんて大したもんでもなく下らない答えしかない。戦争・内戦が勃発することによって起きる悲劇こそがこの映画の真髄だから理由を見せても見せなくても影響ない。」
「正しい戦争なんてない。戦争なんて起こった時点で負けなんだということを伝えるためにこの映画を作ったんだ。」
と言われたように感じました。この答えが正解だとは限らないですし、自分が今置かれている状況・環境によって感じ方が変わってきそうでもあります。何度も自問して答えを出していくしかないし、監督としてもそうやって戦争への価値観を見つめ直す機会を設けたいという意思があるのかもしれません。
考察②:エンドクレジットに写された写真のメッセージ
この映画のラストショット。ジェシーが撮ったと思われる祝勝写真。
私はこの写真を見た時、なんだかモヤモヤ🤔しました。
えっ、喜んでいいの?
という感覚に陥った。
WFの兵士的には軍事的ターゲットをクリアし、歓喜に身を委ねるシーンなのかもしれない。
しかし、私たち観客は戦場ジャーナリストである主人公らとシンクロして映画鑑賞をしてきたのでとてもじゃないがこの写真を見て兵士たちと感情を共有しようとは思えなかった。
このモヤモヤ感こそ監督から観客への最高のプレゼントとして仕組まれたものように思えてならない。
このシーンを見て「喜ぶ人にはなるな」と警告されているような感覚が心を支配してくる。
実際に監督がこのラストショットに込めた意味はわかりません。パンフレットを読めば分かるのか、はたまたどこかの雑誌インタビューに掲載されるのかもしれない。
この記事を執筆している現在、ネットの海を調べてもその答えには辿り着けなかったので自分なりの答えを残りしておくしかありません。
私はあのラストシーンは監督からの「警鐘」であったと思います。戦争なんてどう転んでも悲惨な末路しかない。そのゴールに喜べるような人間にはなるな・・・そう言われているような気がしてならない。
終わりに
今回は映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』IMAX版の評価・感想を述べました。
2024年ベスト級の傑作ムービーでした!
アレックス・ガーランド監督に深く深く感謝です。
ここまで高い次元で映画を構成する要素が噛み合っている作品は稀有です!さすが全米2週連続1位の実績がある作品だけあります!
重ね重ね素敵な映画体験をプレゼントしてくれた監督・スタッフ・キャスト陣に深く感謝です。
コメント