おはようございます😄映画レビュアーのあーさんです。
今回は2024年10月4日より劇場公開された映画『ふれる。』を鑑賞して参りましたので、その評価&感想記事となります。
監督:長井龍雪
脚本:岡田麿里
キャラクターデザイン・総作画監督:田中将賀
の3名が名を揃えるということで、
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』
『心が叫びたがっているんだ』
『空の青さを知る人よ』
以上3作品に続く超平和バスターズの最新作となった『ふれる。』過去3作品と異なり高校生を卒業した少し大人な年齢層がメインキャラを固めており、トップメインの3名も男性オンリーということでこれまでの作品とは異なるアプローチ・作風となった今作品。
まずは率直な面白さについて意見を述べましょう。
中盤までの岡田麿里らしさ全開な展開はかなり面白い!
しかし、中盤以降は失速してしまったことは否めない。物語は綺麗に畳めているだけにクライマックスの駆け足感は惜しいと思ってしまう。
といった感想になります。
惜しいです。とても惜しい。
クライマックスが丁寧に進められたら名作に届いた可能性は感じます。
本記事では映画の良かったところを中心に何故名作に届かなかったのか言語化していこうかと思います。
評価まとめ
まずは映画に構成する様々な要素についての評価をさせていただきます。
上記画像にまとめたものがそれとなります。
ストーリーの旨みを決める部分は星3評価が多く、ストーリーをアシストする付加価値的側面である作画や背景美術・音楽方面は評価高めです。
主観的満足度:星*7 ★★★★★★★☆☆☆
映画を見終えた身として満足度を評価するならば10点満点中7点といったラインです。
減点すべきポイントは特になく、酷評するようなところはなかったです。中盤までの勢い・岡田麿里のエッセンスが詰め込まれた展開が良かっただけにクライマックスの駆け足感が足を引っ張って評価をダウンさせてしまったので星7に落ち着いきました。
高評価ポイント:背景美術
本作品はメインキャラ3名が少年時代を過ごした「離島」と高校卒業後のメイングランドとなる東京の「都会」が主要舞台。他にも様々なロケーションが登場しますがネタバレになるので割愛。
離島の自然に恵まれたロケーション再現。都会特有の圧倒的情報量を内包した背景美術の表現力は絶賛に値します。
また、メインキャラ3名の生活拠点となる「家」。こちらも大変作り込まれており説明台詞はないものもメインキャラがどういったものを好むのか(PS5や人生ゲームが置かれた居間)を語る機能を持っていて素晴らしいと感じました。
家にはそこに住む人間の個性が滲み出ます。最初は3人男だけだった空間から女性2名が加わって変化していく様も味わい深く、本作品の背景美術は非常に高クオリティであったと断言します!
ボーナス評価ポイント①:脚本・面白さ
基本評価では3点をマークしておりますが、ボーナスで1点追加している項目となる脚本の面白さについて。
客観的には星3が妥当なのですが、主観的にはもう一声加点したいというのが本音です。
やはり中盤の展開は素晴らしいんですよね😆
あそこまで見事に人間が持つ棘・毒性を表現し、畳み掛けるようにコンボを繋げていくのは流石岡田麿里の一言に尽きます。
詳しくは本記事の後半で触れますのでネタバレOKの方はそちらに目を通していただけたらと思います。
ボーナス評価ポイント②:作画(調理作画)
本作品の主人公:小野田秋(CV:永瀬廉)は口下手コミュ障であり卓越した料理の腕前の持ち主。
秋の手腕は本編で幾度となく披露され、その度に一級の作画スタッフによって描かれた調理シーンが登場します。
これがまぁすごいんです!
フライパンの上で炒められるカレーの描写が特に印象に残っていますが、細かい作画で表現されたフライパン上の食材の表情は是非劇場の大スクリーンで味わっていただきたい!
余談:主演3名のアフレコ技量について
本作品のメインキャストは全員NOT声優となっています。
小野田秋(CV:永瀬廉)
祖父江諒(CV:坂東龍太)
井ノ原優太(CV:前田拳太郎)
彼らのアフレコ技量について気になる方もいらっしゃると思いますのでコメントを残しておきます。
永瀬廉・・・結構良い。
祖父江諒・・・最初はダメだと思ったが、途中から上達を感じた。
井ノ原優太・・・上手い!流石『仮面ライダーリバイス』で1年間アフレコ経験しただけある!
と言った具合です。
祖父江さんだけ🚥黄色信号でのスタートでしたけれど、耳が慣れたのか本人の技量が上達したのか不明ですが途中から違和感感じなくなりました。私的には彼の実力が向上したと思いたいです。
感想 ネタバレ無し
上記画像は私の鑑賞時のテンションの推移を線グラフ化したものです。
中盤で大きく盛り上がり、クライマックスで失速してしまっているというのが伝わればと思います。
本当にクライマックスの駆け足展開がなければ名作たりえたと思うのですが、なまじやりたいことを詰め込みすぎたのとクライマックスの登場人物が絞られたことが原因となって減速してしまった印象です。
中盤の後にクライマックスと呼べるチャプターが2つもあるので詰め込みすぎなんですよね。どちらも必要不可欠ではあるのですが、どっちもこなそうとすると荒さの目立つ展開になってしまって序盤から中盤の丁寧さがどこに行ったのやら状態なのが評価ダウンを推し進める結果になってしまいました。
惜しいです。誠に惜しい。
このクライマックスにもう少し尺を割くことができればまた違ったのかなぁ・・・とか思ってしまいます。
感想 ⚠️ネタバレ有り
さて、ここから先は映画本編の内容に触れていく都合上ネタバレ要素が含まれますのでネタバレNGの方はご注意ください🙇
序盤から中盤にかけて爆弾を丁寧に設置していく岡田麿里脚本の面白さ
映画の序盤は主役3名の友情を描くパート。
彼らの完成されているけれど、どこか「歪な絆」が如実に伝わってきます。
そして、その友情・繋がり・絆が崩壊に向かうかのように彼らの間に現れる女性陣2名の存在がちょこちょこ爆弾を設置していくかのような作劇が見ていて面白いです‼️
3人が同居する家にシェアハウスメンバーとして加入する鴨沢 樹里と浅川 奈南。男と女が一つ屋根の下に同居するとなれば、そこにドラマが生まれるのは当然のことで彼らが関係値を更新するごとに男3人の友情を崩壊させるのではないかという爆弾は一個一個丁寧に設置されていく。
こんなの面白いに決まってるじゃないかっ!
設置された爆弾が連鎖的に誘爆していく中盤の面白さは突き抜けている!
序盤に設置された爆弾が起爆し、連鎖的に誘爆して強固な絆に思えた男の友情が崩れていくのが中盤のパートであり、この映画の醍醐味だと思っています。
見事にこの中盤に爆弾が全て処理されていくのですよね(笑)
優太のロマンス(仮)が偽りの物であったと判明してから連鎖的に出来事が起こっていく。諒と樹里の関係性が明かされ、「ふれる」の力の真実などが畳み掛けるかのように友情崩壊のコンボが刻んでいく。
流石、岡田麿里!
人間が持つ毒性や心の棘を描かせたら右に出るものはいないです!
駆け足気味なのが惜しいクライマックス
中盤で崩壊した男の絆が修復に向けて動き出すのがクライマックスパートその1。
「ふれる」との繋がりを修復しようと奮闘するクライマックスパートその2。
2回も映画のクライマックス足り得る展開が連続するパートですが、序盤中盤と比較して脚本のパワーがダウンしたように感じました。
ここら辺は正直、「ふれる」のファンタジーパワーもあって少々強引かつ駆け足な作劇が目立ちます。中盤までかなり丁寧に積み重ねていたけれど大味な話運びに感じて仕方ないと言った具合です。
この辺は岡田麿里の男の友情に対する熱量が低いのかな〜?と感じてしまいました。
それと、女性陣の出番が激減してしまった点も脚本のパワーを下げた要因のように感じます。
序盤から中盤までの面白さを支えていたのが女性陣の介入による飽和状態となっていた男の友情に変化が起きていたこと。男組の友情崩壊という役目を終えたら女性陣の出番激減という采配はわからなくもないし必然なのかもしれないが、実際の完成映像の面白さを味わってしまうと女性陣にクライマックスでの役割をちゃんと用意できていればこの作品は跳ねた可能性があった用意に思えてならないのですよね。
めちゃくちゃ至難の業なのはわかるので無理を要求しているとも分かるのですけど・・・。
「面白れー女」浅川 奈南の出番をもっと増やしてくれ
なんと言っても浅川 奈南が「面白れー女」なんです。作中で尻軽だの言われるのも納得できちゃうキャラ造形で優太とのロマンス詐欺やストーカー男に付き纏われるのも全て本人の資質が由縁。
奈南はひったくりに奪われたバックを秋に回収してもらうという縁で本作品の物語を稼働させて張本人。シェアハウスのきっかけも、男組の友情崩壊の要因も彼女が関わっており奈南抜きには本作品はスタートラインに立ててすらいない。
なのにクライマックスパートの出番はごく僅か。
これは制作サイドに異議を唱えたい。こんな面白い女をフェードアウトさせるなんて勿体無いです!
クライマックスの限られた出番であれだけインパクトのある発言(顔が好き。それと身長が高いこと。)を残せるのだから、どうにかして出番を増やしてほしかった。
少年が大人へと着地する物語の畳み方はGOOD👍
なんやかんやとクライマックスには文句を言ってしまいましたが、物語のオチは見事です。
シェアハウスを辞めてそれぞれ一人暮らしの道に辿り着くというのは未熟だった大人もどきの3人が正式に大人としての一歩を踏み出したということを示しているようでグッとくるものがあります。
秋のコミュ障っぷりは映画冒頭から描かれてきて、「ふれる」の力=裏技的なコミュニケーションに依存していた彼が親しんだ友の側から離れると言う道筋は素直にエモ味を感じます。
終わりに
今回は映画『ふれる。』を分析し評価/感想を述べました。
作品の根底にあるコミュニケーションというテーマせいは普遍的なものであり、SNSが栄華を極める現代(2024)において深く突き刺さるメッセージのこもった作品でありました。
そのテーマを言語として紡ぐ主人公と「もう一人の人物」。主人公が口にするのは当然ですが、もう一人の人物に関しては
お前が言うのか!?
とセルフツッコミをしてしまい、岡田麿里の術中にハマってしまったようで楽しい体験でした。
男の友情ものとして見ると、そこまで噛み応えのある作品ではないですが彼らの友情が飽和状態から崩壊していくプロセスは脚本家:岡田麿里の手腕が冴え渡っておりとても満足感の高かったです。
やはり突き抜けた作家性は心に刺さりますね。
今後も岡田麿里ならびに超平和バスターズの新作映画が見れることを心待ちにしています。
それでは👋
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